2012年4月1日日曜日

尾鷲歳時記(62)

届いた風車
内山思考

囀りの焦点となり森をゆく  思考

作ってみました金銀の風車












郵便受けからはみ出すように書籍小包が入っている。句集のようだ。「謹呈・和田悟朗」とあるのを見て、僕は宇宙で一番幸せな男になった。別に尾鷲で一番でも地球で一番でもいいのだが、こういう感覚は個人的なものだから、少々大袈裟でも許されるだろう。 とにかく、和田悟朗さんの第十句集「風車(かざぐるま)」が届いたのである。

先日、風来の句会で小野田魁さんが、「先生、句集はいつ頃?」 と聞いた時、和田さんは、 「もう出来てるよ」と微笑んだので、座は一層明るくなったのだった。 夕食もそこそこに開封、装丁をじっくり眺める前に本の帯を外して裏返し、それを裏表紙へ挟んだのには訳がある。帯に和田さんの自選句が十句ほど(十二句だった)印刷されていたので、それを見ずに、まず僕の好きな十句を選んでみたかったのである。後で照らし合わせるのも楽しみの一つだ。

和田悟朗句集・風車
さて読み出そうとしたら来客で、しばし俳句を忘れた。人間の頭脳とはよく出来ているもので状況に順応する。 続いて姉から電話が入る。またまた俳句が姿を隠し、先日の餅搗き器の話で盛り上がる。あれを炭焼のバイト先の「なみちゃん」にあげたら、早速餡餅を沢山こしらえて来てくれ、備長炭で焼いて食べたら美味しかった、という内容。

一段落して「ふう」と句集の表紙の風車に息を吐いたら、今度は風来の同人でメル友の玉記久美子さんと喜びを分かち合おうという気になった。 感動を伝えるのにメールではまどろっこしいので、電話でしばらく話す。聞けば彼女も来たばかりの「風車」を読んでないらしく、会話は和田悟朗さんへの賛辞に終始する。あと少し俳論も交える。いつも、身近に俳句を語り合える友人が居ないので、いろいろと参考になった。

もう何も無いかと思ったら、妻が残業から帰って来てお疲れ様。台所でコーヒーを飲みながら世間話をする。話題は大阪で開催中の「ツタンカーメン展」について。 そして、再び机に戻った僕は、咳払いと深呼吸の後、おもむろに句集を開いて「ワダコスモス」へ入っていったのであった。