2012年4月15日日曜日

私のジャズ(67)

スティーブ・マーカス
松澤 龍一

 STEVE MARCUS TOMORROW NEVER KNOWS
(VORTEX STEREO/2001)













当時、新興のレコード会社、ヴォルテックスより発売されたスティーブ・マーカスの初リーダー・アルバムである。コルトレーン派のソプラノ、テナー・サックスの大型新人として話題になった。一番ジャズを聴いていた頃なので、1960年代だったと思う。レコード・ジャケットを見ると1968年とある。ジャケットには曲名とリーダーのスティーブ・マーカスの名前しか記載されておらず、他のメンバーが分からないという実に不親切なアルバムだ。確か、ラリー・コリエルというロックのギターリストが参加しているはず。時代を反映してか全編ロック調。ビートルズ・ナンバーのトモロー・ネバー・ノウズを演奏し、それをアルバムのタイトルにしている。

全曲エイト・ビートであるが、スティーブ・マーカスのソロはコルトレーンそのものである。マイルスのようにコルトレーンもロックに走ったならば、かくあらなんという演奏だ。このアルバムの次に1、2枚のアルバムをリリースして、すっかり姿を消してしまったと思っていたら、ちゃんとジャズをやっていた。名門、バディー・リッチのビッグ・バンドでメイン・ソリストとして活躍をして、バディー・リッチ亡きあと、このバンドの実質的なリーダーに収まっていた。

ソニー・ローリンズの名曲「オレオ」を聴いてみよう。素晴らしい演奏である。久しぶりに良いジャズを聴いた。




コルトレーンの得意とした「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」、出だしはコルトレーンそのもの。コルトレーンが天上から舞い戻ったようだ。進むにつれてアップ・テンポになっていく。この辺も実にスリリング。1993年の演奏とある。コルトレーンが東京で燃え尽きて30年近くが経っている。