2012年8月26日日曜日

私のジャズ(86)

グラント・グリーン
松澤 龍一

BLUE & SENTIMENTAL /IKE QUEBEC
 (BLUE NOTE 0777 7 84098 23)













上掲のCDはテナー・サックス奏者、アイク・ケベックがブルー・ノートに吹き込んだ数少ないリーダーアルバムである。アイク・ケベックて誰? ハード・バップ時代に活躍したホ―キンス系のテナー奏者であるが、よっぽどジャズを聴き込まないとお目にかかれるプレーヤーでは無い。

ホ―キンスの温かみのあるビブラートをきかせた音色を、もう少し荒々しくしく、ダーティーにした音色で、音色的には後に続くアーチー・シェップやアルバート・アイラーの先駆をなしていたのかも知れない。当時はホ―キンス直系のソニー・ローリンズの全盛期、さらにコルトレーンと続く中で、アイク・ケベックのような音色のテナーはあまり日の目を見る機会が無かった。

サイドメンが素晴らしい。ベースはポール・チェンバース、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズとハード・バップ時代のオールスターキャスト。定番のピアノでは無くギターが加わっている。このギターがグラント・グリーンである。久しぶりに聴いてみて、グラント・グリーンは中々良い。

テクニックを弄することなく、淡々とシングル・トーンでギターを弾いているが、ブルースフィーリングに溢れ、歌心に溢れ、中々聴かせる。ロック系のやたらと騒々しい、派手なギターに慣らされて耳には、かえって新鮮に響く。ユーチューブの音源から「ワーク・ソング」、言わずとしてたナット・アダレーの名曲である。グラント・グリーンも、付き合っているオルガンも乗っている、ファンキーそのものである。こう言ったジャズも良い。


http://www.youtube.com/watch?v=tlNwprawJIE