2012年9月9日日曜日

私のジャズ(88)

ミルドレッド・ベイリー
松澤 龍一

MILDRED BAILEY The ROCKIN' CHAIR Lady
 (DECCA MVCM-265)













一時好きだった女性歌手の一人である。ミルドレッド・ベイリー、ROCKIN’ CHAIRと言う曲がヒットして、ROCKIN’ CHAIR LADY などと呼ばれていた。白人に見えるが真正のアングロサクソンでは無い。インディアンの血が混じっている。写真をみるとふくよかで、思わず京塚昌子を連想してしまう。肝っ玉母さんかと言うとそうでもない。歌を聴くとすぐに分かる。

高音の細やかなビブラートを聴くと実に繊細な神経の持ち主であることが分かる。ショービジネスで大成功を収めた歌手かと言うと、そうでもない。どちらかと言うと不遇のまま44歳の生涯を閉じてしまった。

ビリー・ホリデイがもっとも影響を受けた歌手がミルドレッド・ベイリーと言われている。高音部のビブラートを聴くと、なるほどと思ってしまう。ミルドレッド・ベイリーの影響下にビリー・ホリデイが生まれたことを聞くと、どうしても笠置シズ子と美空ひばりの関係に思いが及ぶ。どちらも知名度の点からすると後塵を排したビリー・ホリデイや美空ひばりに軍配が挙がってしまうが。

彼女の唄うセントルイスブルースを聴いてみよう。なんとも愛くるしいブルースである。途中で出るスキャットも魅力的だ。こんなに女性の可愛らしさを前面に出して唄う歌手は余りいない。映像で時々出るハンサムな男性は彼女の旦那で、レッド・ノーボと言うザイロフォン(木琴)奏者である。