2012年10月7日日曜日

私のジャズ(92)

主張するミンガス
松澤 龍一












ャーリー・ミンガス、ベーシストである。チャーリーとの愛称で呼ばれるのを嫌い、チャ―ルズ・ミンガスと称するようになった。このあたりもミンガスのミンガスたる所以である。とにかく主張するベーシストである。ベーシストとしての腕はちょっと疑問、レイ・ブラウンなどと比べればはるかに劣る、と思うのだが。彼が活躍した時代は公民権運動で黒人が権利を主張し始めた頃、マックス・ローチやアービー・リンカーンなども同様に彼らの演奏を通じて、黒人の権利を主張していた。この主張するジャズ、ジャズとしては大概つまらない。良いと思う演奏や作品にお目にかかったことが皆無である。

「ピテカントロプスエレクトス(直立猿人)」と名付けられたミンガスのアルバムは、その奇妙なタイトル名により、話題を呼んだ。直立猿人に託し、黒人の自立、蜂起、社会的地位の向上を主張しているのだろうか。とにかく、タイトル曲に於けるジャッキー・マクリーン(アルトサックス)やJ.R.モントローザ(テナーサックス)の荒々しいトーンを聴けば、何かを声高に主張しているようにも聞こえるが。でも、ジャズとしてはちょっと作り過ぎで面白くない。




次の曲は、一時幻の名盤だったキャンディドと言うマイナーレベルから発売されたMINGUS PRESENTS MINGUS の中の一曲。人種差別主義者と言われた南部のある州の知事を揶揄している。