2012年10月14日日曜日

私のジャズ(93)

エレクトリック マイルス
松澤 龍一

Miles Davis ON the corner 
(Sony SICP 845) 














上掲の写真はマイルス・デイヴィスの ON the Corner  と題されたCDケース(オリジナルはレコードジャケット)である。おおよそジャズの音盤に似つかわしくないポップ調のデザインに驚かされる。事実、中身はジャズでは無い。電気楽器によるロックである。マイルスが最後に到達したのはロックであった。ビバップの頃、大パーカーの後ろで恐る恐るトランペットを奏でることで、ジャズシーンに登場したマイルス・デイヴィス、この後、クールジャズにハードバップにと常にジャズの最先端を歩んできた。

「マイ ファ二― ヴァレンタイン」、「フォーアンドモア」、「イン ベルリン」、「イン トキョー」などの一連のライブ演奏でインプロヴァイザーとしての頂点を極めたマイルスが次に向かった先はエレクトリックロックであった。「マイルス イン ザ スカイ」に始まり「キリマンジャロの雪」、「オン ザ コーナー」、「ビッチェス ブリュー」、「ジャック・ジョンソン」と立て続けにロックのアルバムをリリースする。コルトレーンのフリージャズ化に加え、このマイルスのロック化がジャズと言う音楽の終焉だったと思うのだが。

マイルスの音楽活動では二つの頂点があった。一つはジョン・コルトレーン(テナーサックス)、レッド・ガーランド(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)とのクインテットで多くの演奏がプレスティッジに録音されている。二つ目はやはり60年代のライブ録音であろう。特に、新進ドラマーのト二―・ウィリアムスとの競演が素晴らしい。中でも「フォーアンドモア」は今聴いてもスリリングである。これがジャズの歴史に残る最良の演奏であると未だに信じる。

ロック化したマイルスで好きなのは「ジャック・ジョンソン」と言うアルバム。ジャック・ジョンソンとは最初の黒人人ヘビー級世界チャンピオンである。下記のユーチューブにマイルスの演奏をバックにその戦いぶりが画像で残されている。アップライトスタイルのジャック・ジョンソンに白人のボクサーが軽くあしらわれているのが面白い。