2013年1月20日日曜日

尾鷲歳時記(104)

ヤマネのハカセ
内山思考

旧友や冬眠鼠(やまね)を語るとき少年   思考


湊先生の著作(一部)












この正月、40何年ぶりの高校同窓会があり、その時、湊秋作君(理学博士)が「ヤマネ」についてミニ講演を行ってくれた。ヤマネというリスに似た小動物がいるのは知っていたが、僕の知識もそこまで。だから、少し照明を落としたホテルの会場の一角で、彼が小さなスクリーンに映像を写しながら話し始めた時も、申し訳ないがさして興味を持てなかった。

100名ほどの出席者の大方は、それよりも懐かしい面々と永(なが)の無沙汰を癒やすことに一生懸命のようで、同じ様に僕もその輪の一つに居たのだが、クラスのメンバーとの思い出話がひと息ついたので、ヤマネ話の方へ近づいて彼の声に耳を傾けてみると、優しく、柔らかく、そして丁寧な口調である。

「ああ、この人は子供たちに話すことに慣れているな」と思った。自分が研究して来たヤマネについて、相手によく知って貰おうと努力している彼の様子が伝わって来て、僕は頭の中でモードを「静聴」に切り換えた。が、何せ立食バイキングスタイルだから人の動きが多すぎる。結局、僕の脳裏に残ったのは暗視カメラで捉えたヤマネのすばしこい動きだけだった。

帰ってネットで調べると彼は山梨県北杜市の「キープやまねミュージアム」館長で、著作もたくさんあるようだ。早速その一冊を取り寄せてみることにした。数日後届いた「ヤマネのすむ森(湊先生のヤマネと自然研究記)」は、小学校の高学年あたりを対象にした構成で、写真やイラストをふんだんに使った楽しい本である。いつもは早読みなのに珍しくゆっくりとページを繰りながら、僕はヤマネの魅力に少しづつ触れていった。

尾鷲にもヤマネはいるはず
アレ、文中に「和歌山県那智勝浦町出身」とある。ひょっとしたら、と中学校の卒業アルバムを引っ張り出してみると、いたいた、彼は3組で、三年生の時転校して来た僕は1組。高校時代もクラスが違ったけれど、彼はあれから「ヤマネのハカセ」になったのだ・・・・・。湊秋作先生のおかげで僕もヤマネファンになりそうである。