2013年5月19日日曜日

尾鷲歳時記(121)

沖縄再訪 
内山思考

梅雨入りや那覇の夜の色透ける傘  思考

ホテルの部屋から見る
雨の国際通り













ホテルの部屋の小さなカーテンを引くと、那覇市国際通りが見下ろせた。色とりどりの灯りが強い雨ににじんでいる。「ああ、綺麗やな」思わず呟く。僕と妻は先月に続いて沖縄にやってきたのだ。今回は観光目的ではなく、妻の個人的な用事を済ませるのが目的なのだが、些細な事なのでここには記さない。夕方、梅雨入りしてどんよりと曇った那覇空港に着くといつものようにヒロコさんとタカシさんが迎えに来てくれていた。ホテルまでの道すがら、楽しかった先月の磯遊びに話題が移ると一段と座が盛り上がった。

あの日、実はタカシさんが車の鍵を無くしたのである。そこはずいぶん町から離れたビーチだったので、本来なら大騒動のはずなのだ。ところが、意外というか何というか、誰も慌てる素振りを見せないのである。一応探す対象を貝から鍵に変更したものの、僕はもう完全に諦めていた。だってこんなに広い潮溜まりの浜でそんな小さなもの見つかりっこ無いじゃないか・・・・・。
 
しかし、まだ昼過ぎだしケータイ電話もある。誰かに迎えに来て貰うことになるに違いない。そんなことを考えながら、目についた珍しいツノガイを拾っていたりしていると、妻の声が風に乗って聞こえて来た。「あったよ~」顔を上げると、手を振る妻の隣で、鍵を発見したヒロコさんが喜びのカチャーシーを踊っていた。「あれはワタシが見つけたんだからね」助手席に乗ったヒロコさんが笑うと「新しい鍵にしたかったのにさ」とタカシさんも負けてない。
大好きな炭酸飲料・ルートビアの
ボトル入り発見
鍵を落としたことを咎めずに根気よくタカシさんの歩いた跡を探し続けたヒロコさん。何とかなるからとりあえず磯遊びを楽しもう、とするタカシさん。もう一人事件?を知って「あそう」とだけ言って僕にサザエの一杯入ったバケツを突き出したタカシさんの知人ヨシミさん。その人たちの前向きな考え方は驚くほど新鮮で、僕と妻は改めて沖縄ファンになってしまったのであった。