2013年6月23日日曜日

尾鷲歳時記(126)

緑雨の出雲路
内山思考 

(宍道湖にて)
湯上がりや湖(うみ)間近なる夏料理  思考

義兄の里の雨蛙













桑名の姉の家を出て、二度パーキングエリアで休息をとった以外、緑の雨の中を西へ走り続けた。目的地は島根県大田市の温泉津(ゆのつ)温泉。義兄の生まれ故郷である。後ろの座席では、姉と妻がしゃべり詰め、僕もちょいちょい合いの手を入れて車内は終始笑いが満ちている状態だ。それにしても、生まれて初めての中国自動車道は山また山、ナビの画面で地名を確認しなければ、雨に煙った同じ風景が流れ続けているような感覚に陥る。

三時間・・四時間・・・、とりあえず浜田市に出て日本海が見えればあとは、少し東に戻ればいいはずである。五時間・・六時間・・・、雨脚に強弱があるのは列島に近づきつつある台風の影響である。満タンにして来た燃料も残りひと目盛り近くなって、それもちょっと不安の材料になって来た頃、遠景に大きな風車が並んで見えてきた。そこが浜田市のようだ、「良かった」。ようやく海岸線に出たが沖は靄に包まれている。あと一時間ほどだろう。

国道9号線に下りて給油すると身体も安堵したのか、急に背中が凝ってきた。早く温泉に浸かりたい。山間部へ方向を変えてしばらく行くと温泉津温泉の看板がそこここに見えてきた。もう少しである。鄙びた街並みを右に左に曲がり、本日の宿にやっと到着したのは五時過ぎだった。(中略)明くる朝はテレビドラマ「あまちゃん」を見てから若女将に見送られて出発。義兄の実家は予想通りの静かな山あいにあった。義従兄、義従姉たちの心厚いもてなしを受けて六年ぶりに夫の故郷に帰省した姉が泣く。
このあと
島根ワイナリーへ
その二時間後、僕たちは出雲大社の境内にいた。意外に思ったのは、参拝の手順が「二礼四柏手一礼」であること。長い間「二礼二柏手一礼」しかも柏手をそっと打つ形式に慣れてきた奈良、和歌山、三重育ちの僕には四度しかも強く打つ柏手は軽い驚きだった。でもこちらの神様は奥にお出でになるため、そうしないと届かないのだと聞いて、なるほどと納得したのであった。