2013年8月11日日曜日

尾鷲歳時記(133)

シング、シンガーソング
内山思考

君の歌に出会えて月も帰るらし  思考

ヤマネの絵はがき









先日の夜、行きつけのミュージックカフェで恒例の新曲コンサートがあった。僕は二年ぶりの出演である。昨年も一曲作って密かに練習していたのだが、一週間ほど前になって自治会のカラオケ大会とダブルブッキングしていたことに気づき泣く泣くコンサートを諦めたのだった。カラオケの司会を仰せつかっていたのだから仕方がない。だから今年はちゃんとその日は開けておいた。カラオケを否定するわけではないけれど、機械の伴奏に合わせて既成の曲を歌うより、自分のオリジナルを当日のメンバーやお客さんの反応を確かめながら歌う方がどれだけ楽しいか知れやしない。

さて当日になった。僕の出番は最後から三番目、今年のエントリー曲は「ヤマネのうた」である。実はこの歌は高校の同級生だった湊秋作クンのために作ったものだ。今年の初め同窓会で四十二年ぶりに会った彼はなんと、小さな小さな動物ヤマネの研究で理学博士になっていたのである。僕はとても嬉しくて誇らしくて彼のために歌をプレゼントしようと考えた。で出来たのがこれ。他の出演者が次々に新曲を披露してゆく中、徐々に高揚感が増してゆきとうとう出番がやってきた。

彼から届いたヤマネの本









さあ歌おうか…、僕は立ち上がった。
「ヤマネのうた」
一、森はこころを持っている/夜も静かに話してる/太い木の幹高い枝/伝い走る小さな命/澄んだ瞳に映るのは/億光年の星の影/生きる力はあたたかい/リラリラリラ ヤマネのうたよ
二、コケや木の皮森の糸/編んで巣づくりお手のもの/尻尾ふさふさ背中には/黒いライン一本おしゃれ/かたい木の実は苦手でも/トンボカナブン花の蜜/森は素敵なレストラン/モグモグモグ ヤマネのうたよ
三、森がからだを軽くして/白い季節にそなえてる/風が冷たい笛を吹き/「もう遊びはおわり」と告げる/山のねぼすけ丸まって/コオリネズミと呼ばれても/生きる力は変わらない/スヤスヤスヤ ヤマネのうたよ