2013年9月29日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(143)

山手線・日暮里(その43)
根岸(上根岸82番地の家(27)「子規庵」)
文:山尾かづひろ 

子規の句碑(天平会館)










都区次(とくじ):子規は実際には奈良の法隆寺ではなく、東大寺近くの角定(かどさだ)という旅館で柿を食べ、東大寺の鐘を聞いたということですが、私はその旅館へ行ってみたくなりました。

かの宿の今はなくなり秋なかば 大森久実

江戸璃(えどり): 角定は当時高級旅館で伊藤博文、山県有朋、西郷従道、フェノロサ、岡倉天心らが泊ってね、山岡鉄舟も泊って對山楼(たいざんろう)と命名したのよ。場所的には今小路(いまこうじ)という場所なのだけれど、奈良県庁と奈良国立博物館の間を通っている国道の「京街道」を知っているわね。その街道に面していて、転害門(てんがいもん)の近くにあったのよ。その後、現在のJR奈良駅が三条通りに出来てから今小路は寂れてね、角定は昭和38年に廃業しっちゃったのよ。現在は天平倶楽部という和食料理店になっているわよ。その敷地の中に「子規の庭」というのが整備されていて、「秋暮るゝ奈良の旅籠や柿の味」という子規の句碑があるわよ。
都区次: 私は奈良へは近鉄で行くことが多いのですが、近鉄奈良駅から、その天平倶楽部への道順を教えてください。
江戸璃: 天平倶楽部は近鉄奈良駅から北東にある国立奈良女子大学を越えた辺りにあるのよ。奈良女子大学は江戸幕府時代の奈良奉行所の跡で広大な敷地なのですぐに分るわよ。天平倶楽部へは歩いて15分ほどね。
都区次:ところで今日は日暮里からどこへ行きますか?
江戸璃:ちょっと涼しくなったから神楽坂で日本酒の燗を飲まない?

奈良女子大学










寸土あり神楽坂にも花芒  長屋璃子(ながやるりこ)
黒塀へ背より入りたる秋袷 山尾かづひろ