2013年11月24日日曜日

尾鷲歳時記(148)

椿油の話
内山思考 

浦晴れて冬めくものは波がしら  思考


搾った油は右下の鍋に落ちる仕組み









椿の実を搾って油を取る作業が見られるというので、三木浦町へ出掛けた。尾鷲市内から車で二十分ほどのところである。今日は快晴で、波は少し立っているものの、風はそんなに冷たく感じない。湾の向こうに古江港が見える。

冬の鳥舞うや対岸にも港  思考

三木浦コミュニティーセンターの戸を開けると、10人ぐらいの男性女性が賑やかに仕事をしていた。見に行きませんか、と誘ってくれた同行の青木夫妻も恵子も、顔見知りがいるらしく、たちまち会話に溶け込んで行った。僕は写メールを撮りながら、作業がどういった行程で進むのかに注目した。

虫喰いは選られ椿の実の盛られ  思考

大きなスチロール箱いっぱいの椿の実がまず、ミンチ用の機器で細かく砕かれ、それを一度に二キロほど帆布製の袋に詰め蒸し器で蒸す。中に入った時、どこか懐かしいような香りがしたのはそれだったのだ。センターの三鬼主事に話を聞くと、十年前、地元の特産品をと有志が「おわせつばきの会」を立ち上げた頃は、苦心の連続で本場の大島まで見学に行ったとか。なるほどと頷いていると、いよいよ油搾りが始まった。

端然とあり一茶忌の圧搾機  思考

それは鉄製の特注品で、油圧によって20トンの圧力をかけることが出来るらしい。このあたりのメインの作業を行うのは、当会の会長で、地元区長も務める上村さんである。蒸し上がった実の袋がセットされ、少しずつ圧力がかけられると、やがてジワジワと淡い黄金色の液体が染み出して来た。

絞られて光を垂らす椿の実  思考


手荒れなどにお薦めと
三鬼(みき)さん













 
油の量は総重量の1%というから大変な手間である。しかし、搾った後も油分は残っているため、可愛い布袋に詰めて「肌癒やし」として製品化しているという。働いている奥様方のお顔の色つやが良いように思われたのも、きっとその効果だったに違いない。

冬の陽のとろりと椿油かな  思考