2014年5月18日日曜日

尾鷲歳時記(173)

トマタマの作り方
内山思考  

夏来たる鶏舎に強き赤玉子   思考

これがトマタマ












めったに料理を作らない僕だが、たった一つだけ妻や子に「久しぶりにあれ食べたい」とリクエストされるメニューがある。それが「トマタマ」だ。レシピは後にしてひとまず僕の少ないレパートリーを紹介して置こう。ひとつがカレーだ。根がグータラなので学生時代もあまり手の込んだ料理をせず、ご飯だけ炊いてちょっとしたおかずで済ましていたが、ある時ガールフレンドの手製カレーがとても美味しかったので作り方を教えて貰った。

秘訣は材料を全て細かくし、最後にウスターソースと砂糖で味を整えるというもの。小さい頃から母の作る薄いシャブシャブカレー(メリケン粉でとろみをつける)に馴染んでいた僕にはとても新鮮だった。次が焼きそばで、これは母の味そのまま、ソバ麺と魚肉ソーセージとキャベツを塩コショウで炒めて最後にウスターソースで混ぜ合わせたら完成だ。

僕はそれが焼きそばだと思っていたから、初めて大阪で食べた時にあまりに味が濃くて驚いたものだ。たこ焼きやお好み焼きにマヨネーズ、の取り合わせにも目を見張ったが、田舎者だと思われたくなくて、平静を装って食べたら病みつきになった。母のアッサリ焼きそばは今でもたまに作ることがある。

前置きが長くなった。トマタマに必要なものはトマトとタマゴだけ、何のひねりもないネーミングである。トマト3個にタマゴ4個ぐらいが目安。まずフライパンに油を少し多めに引いて、溶いたタマゴ(砂糖と塩を少々)をレアにスクランブルし、一度皿にあげる。

娘、姉と入院前の宴
同じフライパンに今度はゴマ油をたっぷり入れ、八等分ほどに切ったトマトを炒める。ここで砂糖をやや多め(あれ?入れすぎたかなぐらいが丁度いい)に振りかける。塩も少々。で水気が出てきた頃にさっきのタマゴをさっと混ぜ合わせて出来上がりである。以前にテレビで中国人の娘さんがこれを食べるとお母さんを思い出すと言っていた一品だ。でも正式な料理名は知らない。