2014年6月1日日曜日

尾鷲歳時記(175)

左利きの話 
内山思考 

蹴球を言語としたり汗の民    思考

左手を上に杖を持つ和田さん
六林男句碑の前で









この頃、桑名の姉の家に泊まる機会が増えたので、食事をしたりテレビを見たりする内についつい思い出話に花を咲かせることが多くなった。先日も、最近の食べ物のCMには左利きのタレントや俳優がよく出てくるね、と左手の箸でハンバーグを挟みながら僕が言うと、姉が、「お父ちゃんも左利きだったね」と返したので、そこから話題が広がった。

父は元来左を得意としたようだが、幼少期に米の脱穀機に人差し指を奪われる事故に会い、表面上の生活は全て右使いで通していた。気にもしなかったけれど、いつもどこかに不便さを感じていたんじゃなかろうか、と父の齢を追い越して今しみじみ思う。美筆の祖母に似ずあまり達筆でなかったのもその故か。でも祖父(先代の思考)は見事な金釘で、僕の悪筆はきっとそちらの隔世遺伝に違いないと勝手に思っている。ちなみに、右利きの僕が左手に箸を持つようになったのはここ二十年ほどのこと。

僕の場合は左右どちらで
書いてもこんな風
きっかけは和田悟朗さんが父によく似ていて、しかも左利きだから真似をしたくなったのだ。和田さんのように、カッコよく左手に持った割り箸でうどんをズルズルと啜りたい、という我ながら子供じみた発想で今に至っている。外国はどうか知らないが、日本では書くことに関しては右優先で、和田さんも矯正されたらしくペンは右、しかし、現役時代の授業では、両手に2色のチョークを持ってボードに何か書き、それをノートしようと学生がいちいち利き手に色付きペンを持ち替えるのを見て優越感に浸ったという。

右手より左手自在繭ごもり  悟朗

右利き左利きの比率は太古より変わらないはずだから、例えば三十六歌仙の中にも左利きはいたのではなかろうか、と考えたことがある。

曲水の宴ほんとうは左利き  思考

それ以外にも例えば宮本武蔵の二刀流は左利きの産物だとか推察するのも興味深い。歴史に名を残す左利きが左甚五郎だけ、と考える方が不自然なのではなかろうか。