2014年7月21日月曜日

俳枕 江戸から東京へ(185)

山手線・浜松町(その5)
文:山尾かづひろ 

芝大神宮









都区次(とくじ):前回は浜松町・東京タワー近くの宝珠院でしたが、今日はどこへ案内してくれますか?

水を打つ開店前の石畳  畑中あや子

江戸璃(えどり): 相当前に大矢白星師に案内してもらったコースだけれど、増上寺から大門を潜って東へ戻り、第一京浜国道を左折して、芝大神宮へ行くわよ。ここは、今から1000年以上前に建てられていてね。 伊勢神宮の御祭神、天照大御神(内宮)、豊受大神(外宮)の二柱を主祭神としてお祀りしているのよ。そのため「江戸のお伊勢さま」、「関東のお伊勢さま」と呼ばれているそうよ。
文化元年(1804)2月、境内の勧進角力(かんじんずもう)の折、相撲取りが当地の町火消め組の者と喧嘩を起こしてね。芝居「神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)」に仕組まれて、江戸っ子らしい芝居として評判になったそうよ。町奉行根岸肥前守の裁きで「鳴り出した半鐘が悪い」と半鐘を島流しにしたというのは俗説で、半鐘は今も神社にあるそうよ。お守りに、屋根の余材で作った「ちぎばこ」というものがあってね。「ちぎ」が「千着」に通じるということで、「千の衣装を着る」ということは「着るものに困らない」という意味となり、箪笥に入れるそうよ。 芝大神宮は秋の「だらだら祭り」で知られていてね。9月11日から21日まで続いて、期間が長いからこう呼ばれるそうだけれど、この時に「生姜市」が立つのよ。
都区次:夕方になりましたが、今日はどうしますか?
江戸璃:世界貿易センタービルの地下の居酒屋で生ビールを飲みたくなっちゃった。
都区次:いいですね。行きましょう。

ちぎばこ











十五時の芝神明の磴灼けて     長屋璃子
泡消えぬ間のときめきや生ビール    山尾かづひろ