2014年7月27日日曜日

俳枕 江戸から東京へ(186)

山手線・浜松町(その5)
文:山尾かづひろ 

芝離宮










都区次(とくじ):前回は浜松町駅の西側の芝大神宮でしたが、今日はどこへ案内してくれますか?

元々は潮入の池やんま飛ぶ  吉田ゆり

江戸璃(えどり):今日は浜松町駅の東側の芝離宮へ行くわよ。小石川後楽園と共に、今に残る江戸初期の大名庭園の一つなのよ。回遊式泉水(せんすい)庭園の特徴をよくあらわした庭園で、池を中心とした庭園の区画や石の配置は、非常に優れているそうよ。明暦(1655~1658年)の頃に海面を埋め立てた土地を、延宝6年(1678年)に老中・大久保忠朝が4代将軍家綱から拝領したのよ。 忠朝は屋敷を建てるにあたり、藩地の小田原から庭師を呼び、庭園を作ったと言われていてね、庭園は「楽寿園」と呼ばれていたのよ。庭園は、幾人かの所有者を経たのち、幕末頃は紀州徳川家の芝御屋敷となってね。明治4年には有栖川宮家の所有となり、同8年に宮内省が買上げ、翌9年に芝離宮となったのよ。大正12年の関東大震災の際にこの離宮も建物や樹木に大変な被害を受けっちゃったのよ。それでも、翌年の大正13年1月には、皇太子(昭和天皇)のご成婚記念として東京市に下賜され、園地の復旧と整備を施し、同年4月に一般公開されたのよ。また、昭和54年6月には、文化財保護法による国の「名勝」に指定されたのよ。池は元々海水を引き入れた「潮入りの池」でね、引き潮の時は中島から浮島に渡れたり、潮の干満により州浜や島々の風景が劇的に変化したらしいけれど、今は残念ながら海水の取り入れができなくなっちゃって、淡水の池になっているのよ。
都区次:夕方になりましたが、今日はどうしますか?
江戸璃:梅雨が明けたから東京駅前の丸ビル地下の「アメリカンファーマシ―」でアメリカ・ブロナ―社の「マジックソープ」とかフランス・ラロッシュボゼの「日やけ止め乳液」とかの買物をしたいのよ。付き合ってくれない?
都区次:いいですよ。ところで「アメリカンファーマシ―」とは何ですか?
江戸璃:1950年。東京・飯倉坂上にあったアメリカ海軍将校倶楽部の一室にオープンした小さなお店が始まりでね。その2年後、有楽町の日活国際会館(現ペニンシュラ・ホテル東京)に移転し、店名を「アメリカンファーマシー」として営業を始めてねて、当時のお客は、外国人が主流で、他店では買えない魅力あふれる輸入商品が並べられていたのよ。今でもアメリカ文化を体現できるので、私は好きなのよ。

都区次:わかりました。行きましょう。

芝離宮(鳥瞰図)










都心にもオアシスのあり夏帽子  長屋璃子
飛石の梅雨明けしたる色をして  山尾かづひろ