2015年1月25日日曜日

尾鷲歳時記(209)

心便りは心頼り 
内山思考 

一歳が二十歳となれり冬景色  思考

商店街で号外を貰った








自分が沖縄に居ることを忘れる瞬間がある。夜中に目覚めたり、ひとしきり本を読んだり、テレビを見終わったりした時に多い。フッと我に返って「あれ、ここは?」と思うのである。恵子も同じことを言った。彼女は部屋にいる時間が長いので余計にそうだろう。那覇住まいもひと月になったから、街を歩いていて横道にそれてもだいたいの東西南北はわかるし、他郷に暮らしている感覚が無くなりつつある証拠だろう。

ウチナーグチ(沖縄ことば)のイントネーションは聞き慣れた尾鷲弁の如く、夜通し町並みを流して回る北風の、あまり寒くない虎落笛すら、季は違うが「岩にしみ入る蝉の声」ぐらいになってきたのである。それと大きいのは知人友人の存在だ。地元のヒロコさんタカシさんはこまめに連絡をくれる、それに尾鷲の青木上人夫妻、岩手の藤沢さんからはほとんど毎日、便りやメールが届く。

あまりにタイムラグが無さ過ぎて、間に海があることすら忘れてしまう。ただ一つ、全国の天気予報で大陸南部と共に日本列島が映し出された時だけ、沖縄と三重の、そして岩手までの空間の大きさにあらためて驚くのだ。こんなに離れているのか、と。そして、はるばる自分のところに自分の為に、意思と意味を送ってくれる人がいる、という幸いを実感する。

岩手から
『豆腐の病気』絵巻が
先日のお上人のハガキには、賀状のお年玉くじの切手シートが11枚、奥さんは何と二等のふるさと小包が当たったとあり、切手シート四枚でプチ大喜び?していた僕はちょっと羨ましかった。藤沢さんから届いたレターパックには、巻紙に墨で描いた宮城の民話「豆腐の病気」が入っていた。豆腐が病気だと聞いて大根がお化粧をして、ごぼう、人参、なすびを見舞いに誘うが・・・、という愉快な話だ。たしか前日、「送りました」メールがあったのに岩手ー沖縄が一昼夜とは、さすがに日本郵便は凄いなと「着きました」メールを藤沢さんに送った。21世紀の地球は狭い。