2015年2月15日日曜日

尾鷲歳時記(212)

東南東の赤い屋根
内山思考

石蓴汁(アーサじる)沖縄語(ウチナーグチ)も溶けている   思考

中央、やや右寄りに霞む
首里城














曇り空で風が吹くと肌寒い那覇も、雲の間から太陽が顔を出すと一転して風景が眩しく感じられる。今朝、ベランダ(三階)に洗濯物を干して遠目を楽しんでいると、複雑に入り組んだビルの彼方に小さく赤い屋根が霞んで見えた。小さいと言っても実際はかなりの大きさのようだ。「ひょっとして・・・」部屋に戻って地図を広げ磁石で方角を確かめて見ると、どうも首里城のようである。直線距離にして約4キロ。もう一度、ベランダに出て目を凝らした。

眼鏡を中指で鼻の上へ押し上げてなお凝視、間違いない。ビルと鉄塔と看板の狭間を見事にすり抜け、彼の存在は僕を圧倒し続けた。まるで「わかったかい?」とでも言うように。もとの首里城は沖縄戦で消失し、現在のは平成に入って再建された美しい建物である。しかもいつもその背後から朝日がのぼるという嬉しさ。「やった!」アパートを借りて三年目にして初めて知った事実に僕は高揚した。

さて、自分の住まいから名高い首里城が望める幸運を誰に告げようか。「お母さん、ここから首里城が見えるで」、と恵子に言うとテレビの二時間ドラマを見ていた妻は「ふーん」とこちらへひと息吐いて再び画面に目をやった。まあそれはある程度予想通りの冷静な反応である。考えてみれば、那覇に居て那覇の建造物が見えるからと言って欣喜雀躍するほどのことでもない。でも何だか勿体無い気がするので、ここに書いた次第。

内容は沖縄歳時記について
もう一つ、琉球新報の「声欄」に「沖縄十句」と言う僕の投稿が掲載されたので、その中から俳句だけ抜粋する。






朗報をもて球春を引き寄せる        思考    
国道に刈り甘蔗一本轢かれおり
花に友に会いに今帰仁(なきじん)まで一路
花便り打てば雪深しと返事
さればまた来よと五分咲き島桜
寒にして暖なる那覇の町愛す
冬晴れを統(す)べて琉球新報社
ガジュマルの齢畏るゝ四温かな
伝説に鬼は欠かせず力餅
灯を消すや島の虎落笛も慣れて