2015年4月19日日曜日

尾鷲歳時記(221)

春雨のち晴れ
内山思考 

一粒ずつ種を与えて涅槃かな  思考

いよいよ咲き始めた













 菜種梅雨にしては大掛かりな長雨がやっと一息ついたらしく、今日は朝からの上天気、牡丹の蕾がグンと一回り大きくなって、ピンクの身がチラリと肩を出している。いよいよ開花の体勢に入ったようだ。そうこうする内に、寺山の高見に藤の花がハラリ、ホロリと垂れて来て、尾鷲の歳時記は晩春から初夏へのページがさり気なく捲られて行くのであろう。ああ、時の流れに錨を降ろすことは出来ないものなのか・・・、と言う感傷はひとまず置いて、先週、青木上人夫婦と四日市のパラミタミュージアムへ出掛けた。

「北斎の富士」と題し「冨嶽三十六景」「富嶽百景」が展示されていると聞いたからだ。尾鷲から高速に乗れば約二時間、恵子を入れて四人居れば話題に困ろう筈もなく、勢和多気、松阪、津、亀山、鈴鹿と時間空間は過ぎて四日市ICを下りR477を走ること数キロで目的地到着。昼餉は後のお楽しみということにしてまず優先すべきは肝の養いである。かの有名な「神奈川沖浪裏」や赤富士など、北斎の画であるのはもちろんだが、彫り師摺り師の手練が加わっての完成作だから、そのあたりはやはり本物を観ないと迫力が伝わって来ない。

三十六景絵はがきセット
どれもこれも見応え充分、中には判じ絵のような機知もあり、一つの主題(富士山)でよくぞここまで多彩な景色をと、北斎の才能に改めて感嘆した次第である。館の売店でお上人に「三十六景」の絵はがきセットを買ってプレゼントして貰ったので、じゃあ折角だから一枚につき十句ずつ作ってみようと思いたった。


まず「山下白雨」からである。

不二悠久地に雷電の刹那あり
天地(あめつち)に一山ありぬ裾に雷
夏富士や表裏を暗と明に分け
不二隠れ数多の村に喜雨ありし
数学も科学も永久に不二白雨
唯一の山に雷(いかずち)落とす雲
入道雲覗くよ不二の肩越しに
頂きを宇宙の紺に触れて夏
夕立の尾根を集めて不二と言う
雷神に腰を打たせて不二半眼

 次は「凱風快晴」だ。