2015年7月26日日曜日

尾鷲歳時記(235)

 フェルメールと舞妓はん
 内山思考

 噴水に振り向き視線濡らしゆく   思考

青いターバンのおっさん












(前回の続き)、高山寺を出て、次に向かったのは東山区祇園町の祇園甲部歌舞練場である。春に都踊りが開催される場所だ。その敷地内にある八坂倶楽部で「フェルメール光の王国展」と称して彼の作品37点の「リ・クリエイト」版が展示されている。最新鋭の画像技術を駆使した原寸大の再創造品とかで、監修はフェルメール好きで知られる生物学者、福岡伸一ハカセである。

「本物と違うの?」と恵子、「これみんな本物やったら国が一つ買えるでしょ」とちょっとオーバーな僕。会館の二階で同時開催中の「舞妓物語展」を見てから四人は街に出た。ここが祇園かあ、と感無量である。暑さしのぎに入った喫茶店のおねえさんに、舞妓さんの名入り団扇を売っている店を聞いて、そこへ行ってみることにした。実は今売り出しの舞妓「まめ藤」の団扇が欲しいと思ったのだ。それで煽げばきっと涼しさが倍増するに違いない。

8月31日まで開催
店はすぐ見つかった。団扇もあった。「これ下さい」と差し出すと店のお爺さんが「千円」と言ったあと、首を傾げて「あんさん、それどっから持って来なはった?」と聞いた。「そこ」と店先をさすと、「ああ、それ売り物違います」「え?」「書いてまっしゃろ」戻って見直すと確かに小さく「NO、SALE」の文字が、って英語かいオジサン。他のはみな千円と言われても、知らん妓の名前ばっかりやし、「まめ藤さんのはどこへ行ったらあるやろ?」と問う方もスカタンなれど、その返事が憎たらしい。「まあ、本人に貰わなしゃあない」・・・、それが出来たら買いに来んわいっと言いたいのをグッと堪えて、哀れな祇園一見客は、土産物屋を冷やかしている他の三人に合流したのであった。ああ暑っ!。