2015年11月8日日曜日

尾鷲歳時記(250)

冬に入る
内山思考 

猿百匹描き賀状を書き終わる  思考

毎年恒例のフリーハンド








月並みな言い方だけれども暦の上では冬になった。とは言え、身の回りを見渡しても冬を感じさせる事象はほとんどないと言っていい。確かに朝晩は少し寒さを感じる。しかし日中が快晴だともともと風のあまり吹かぬ当地であるから、日差しを暑く眩しく思ったりもするぐらいだ。そうだ真冬の那覇に似ている。岩手の藤沢さんのメールでは先週、冬用タイヤに履き替えたとか。いつ雪が降るかも道路が凍るかもわからない時期になったということだろう。狭くても南北に長い国土を持つ日本ならではのタイムラグである。

でもひとつだけ冬らしい作業を始めた。年賀状を書くことだ。ちょっと気が早いのは承知の上、師走になると息子に子供が生まれる予定で、初孫と対面したら本当に寒くなる前に今季も安謝のアパートで避寒生活を始めたい。だから年賀状を書いて置かねばという算段だ。

「孫が出来るのに(沖縄へ)行くんかい!」と息子は呆れるが惠子も思考も口を揃える。「観光で行くんちゃう(違う)で、養生や」。昨年、腎移植をしたあと体に痛みが出て、入退院を繰り返していた惠子が元気になったのも、尾鷲の冷えを逃れて春先まで沖縄生活をしたお蔭だと僕は思っている。でも初めての孫の誕生が嬉しく無いわけはない。本当は考えるたびにドキドキしているのだ。「なんて名前になるんだろう」 それも気になって、一応無関心を装っているものの「キラキラネームはあかんで」「わかっとる」などと言う惠子と息子の会話に耳をそばだてたりもする。

年忘れの軸にかえた
さて賀状の話、来年の干支は猿だが山の麓にあるわが町はサルの出没が多く、うっかり無施錠で留守をし、帰宅したら炬燵に入って蜜柑を手にテレビを見ていたとか、風呂の扉を開けるとサルが湯船に浸かりしかも頭にタオルを乗せていたなど、数々の逸話が報告されている。内山家も幾度か被害にあい、そんな風だから憎たらしいサルの絵にしてやろうと思ったら、描くうちに何だか自分の顔に似ているような気がして来たのだった。