文:山尾かづひろ
竹炭焼き窯 |
江戸璃(えどり):現代俳句協会特別顧問の宇多喜代子先生の御著書「新版 里山歳時記」の第3章「秋から冬へ」には先生の子供時代、四季を通じて「田んぼのまわり」には用事が山積みしていて、冬季には頬被をして炭を焼くおじさん、萱の炭俵を編むおじいさんの姿があった、という興味深い一節があるのね。という訳で野木桃花師は里山の風景をよく残した横浜市の「舞岡ふるさと村」に冬の景色を拾って、宇多先生の世界を垣間見ようと出掛けた。
枯葉積む堆肥の箱や山の畑 金子きよ
竹炭の炭焼小屋を覗きをり 〃
のぞき見る炭焼の小屋ドラム缶 緑川みどり
七色の冬の紅葉を友好む 〃
北門を入れば残り香炭を焼く 大木典子
被写体に愛犬一匹枯野かな 〃
柊の白き小花や匂ひ立つ 安西道男
炭焼きの小屋無人にて荒れ果つる 〃
新しき獣の足形冬の畑 白石文男
枯木立栗鼠渡る声響きけり 〃
彩りをほどよく重ね冬紅葉 浅治さつき
人見えぬ炭焼小屋に窯二つ 〃
七輪にはじける炭火昭和かな 油井恭子
谷戸深く風を引き連れ落葉道 〃
距離おきて眺めるがよし冬紅葉 浜野 杏
どう使ふ炭の大小出来不出来 〃
園児らの柞紅葉をめぐりをり 砂川ハルエ
里深く竹炭焼きの窯煙 〃
竹炭の仕上りを待つ雨の中 甲斐太惠子
風の橋くぐり来るなり朴落葉 〃
真弓の実爆ぜて華やぐ峡の空 平井伊佐子
竹を積み炭焼小屋の黙深し 〃
中腹に炭焼く小屋の佇まひ 乗松トシ子
おのおのに主張のありて冬紅葉 〃
暗きまで赤を重ねて冬紅葉 金井玲子
あれこれと過ぎし一年初時雨 〃
登り来て一望の丘冬紅葉 宮崎和子
山の際炭焼小屋のうらぶれて 〃
声あげて冬のもみじの色浴びる 脇本公子(新)
小綬鶏の鳴く古民家に炭を買う 〃
朱のエキス地より吸ひ上げ冬紅葉 山尾かづひろ
古民家の番人兼務炭を焼く 〃
一水を隔て里山枯れ急ぐ 野木桃花
雨もよひ炭焼き小屋の土埃 〃
都区次(とくじ):東京からのアクセスを教えて下さい。
江戸璃:横浜市営地下鉄の舞岡駅で下車するのよ。
啾啾と木乃伊(ミイラ)のごとき枯木逹 長屋璃子
枯蟷螂死してなほ眼の殺気かな 山尾かづひろ